茅
茅を刈る。
ひたすら、ひたすら、茅を刈る。
そのうち思う。
「あれ。なんで茅を刈ってるんだっけ。」
何かを一生懸命していると、だんだん目の前のことだけ見るようになってしまう。
目的も忘れて。
目的が見えなくなった瞬間、何もかもが分からなくなってしまう。
目の前が真っ暗で、不安で。
茅畑が広く、終わりが見えないのと同じだ。
そのうち、私なんていらないんじゃないかって思いだす。
みんな私なんか忘れてしまうんだろうなって。
私のことを忘れないで、お願い。
心の奥底ではそう思っている。でも、そんなこと言えないから。こわくて。
忘れないでいてもらうために、茅を刈る。一生懸命。
ふと、一息つこうと思ったら、見てくれている人がいた。
わお。びっくり。ってなったと同時に安心感が私の心を包み込む。
頑張ろう。まだまだできるって思った。