レンコン
「レンコンのような人間になりたい。」
そう思ったのは、いつからだろうか。
レンコンはきれいな花を咲かせる。たくさんの人を魅了し、注目をあびる。
だけれど、私が思うレンコンのよさはそこではなくて。
枯れるとき。
落ちる花びらを大きな葉が包み込む。
そして、その葉は最後に真ん中のほうへくるくると丸まってすべてを包み込んで枯れるのだ。
私の好きな人は、レンコンがたくさんの花を咲かせるように、たくさんの人に幸せな気持ちにさせ、魅了させる。
彼は、まぶしいくらいにひかり輝いているぶん、闇も深かった。
一緒にいるはずなのに、彼の中に私はいなくて。
彼は1人で勝手に考え、勝手に結論をだし、私を捨てた。
もう、隣で一緒に咲いてる花にはなれない。
けれど、彼を包み込む葉のような存在になりたい。
『別れる男に、花の名を一つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。』
川端康成がそう書いていた。
もし、私が最後に彼に送るなら「レンコン」がいい。