野草園
さよならさんかく、またきてしかく。
一度、人との付き合いが嫌になって離れていったあなたは、別人のように変わって戻ってきた。
前よりも、話し方やメッセージが、わざとらしくなって周りを探るようになっていた。
純粋で優しかったあなたは、どこにいってしまったのだろうか。
穴を掘る。
あなたの心の本物を探して。たまに顔をだす昔のあなた。
かわっていくのは当たり前で、わるいことではないのだけれど、自分が知っていた、好きだったあなたと会えなくなるのは、寂しい。
なんだか自分を忘れられたような気持になる。
明日から、また、穴を掘る。
今度は、私の気持ちを埋めるために。
きっと忘れられることができないから、穴に埋めて眠らせる。
きっといつかもた掘り起こした時に、笑うことができる思い出になるだろう、そう願って。
二面性
あなたはいつもそう。
私の話を一生懸命聞いて、一生懸命考えて、一生懸命答えてくれる。
だから、あなたに話したくなる。
それを嬉しそうにしてくれるあなたにすごく惹かれた。
話していると、楽しくて、心地よくて、この時間が続けばいいのにって思ってしまう。
だけど、そんな時間は続かない。
話が終わって、はなれる時が来て。
はなれて少し時間がたったら寂しさが押し寄せてくる。
一緒にいるだけで幸せで、涙が出てくるのはあなたが初めて。
きっとこの先も好きな気持ちは変わらないんだろうなって思う。
恋心を持ったまま、このままあなたとの崩れない関係が続いたらいいって思っている。
タイツリソウ
ハートの形をしたかわいい花。
恋してるんじゃないかって勝手に勘違いさせる花。
「ずっとそばにいるから。」
なんて簡単に言わないでほしい。そんなの嘘になるに決まってる。
でも、言われたときは気がつかない。
嬉しくて、満たされて、幸せな気持ちになる。
まるで、タイツリソウのように。
幸せなピンクのハートで心が埋め尽くされる。
花は咲いたら枯れる。言葉だってそうだ。
タイツリソウはハートが割れて枯れていく。
私と彼の関係も、どんどん離れて、何事もなかったような他人になってしまう。
枯れ方からだろうか。
この花をみた人は、みんな良い印象をもつ。
きっと本当の意味を知ったら、悲しい気持ちになるだろう。
残酷だなぁ。この花も、彼も。
茅
茅を刈る。
ひたすら、ひたすら、茅を刈る。
そのうち思う。
「あれ。なんで茅を刈ってるんだっけ。」
何かを一生懸命していると、だんだん目の前のことだけ見るようになってしまう。
目的も忘れて。
目的が見えなくなった瞬間、何もかもが分からなくなってしまう。
目の前が真っ暗で、不安で。
茅畑が広く、終わりが見えないのと同じだ。
そのうち、私なんていらないんじゃないかって思いだす。
みんな私なんか忘れてしまうんだろうなって。
私のことを忘れないで、お願い。
心の奥底ではそう思っている。でも、そんなこと言えないから。こわくて。
忘れないでいてもらうために、茅を刈る。一生懸命。
ふと、一息つこうと思ったら、見てくれている人がいた。
わお。びっくり。ってなったと同時に安心感が私の心を包み込む。
頑張ろう。まだまだできるって思った。
レンコン
「レンコンのような人間になりたい。」
そう思ったのは、いつからだろうか。
レンコンはきれいな花を咲かせる。たくさんの人を魅了し、注目をあびる。
だけれど、私が思うレンコンのよさはそこではなくて。
枯れるとき。
落ちる花びらを大きな葉が包み込む。
そして、その葉は最後に真ん中のほうへくるくると丸まってすべてを包み込んで枯れるのだ。
私の好きな人は、レンコンがたくさんの花を咲かせるように、たくさんの人に幸せな気持ちにさせ、魅了させる。
彼は、まぶしいくらいにひかり輝いているぶん、闇も深かった。
一緒にいるはずなのに、彼の中に私はいなくて。
彼は1人で勝手に考え、勝手に結論をだし、私を捨てた。
もう、隣で一緒に咲いてる花にはなれない。
けれど、彼を包み込む葉のような存在になりたい。
『別れる男に、花の名を一つ教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。』
川端康成がそう書いていた。
もし、私が最後に彼に送るなら「レンコン」がいい。